大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)864号 判決

被告人 牧野晃一

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第一点について。

集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由並びに勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利がいずれも憲法によつて保障され、従つて集団行進又は団体運動等の自由も、また、憲法によつて保障されていることは所論のとおりであるが、憲法が保障している基本的人権といえども、これを濫用することは許されず、常にこれを公共の福祉のために利用しなければならないものであり、又各人が享有する基本的人権はいずれも平等且つ公平に尊重されるべきものであるから、憲法が保障する集団行進又は団体運動等の自由も無制限のものではなく、公共の福祉のために必要且つやむを得ない限度においては、これを制限することが許されるものといわなければならない。ところで、本件の「昭和二十四年千葉県条例第六十号 多衆行進又は集団運動に関する条例」は地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全を保持することを目的とし(第一条)、多衆行進又は集団運動で、道路、公園その他公衆の自由に交通できる場所を経由又は占拠する場合は、その区域を管轄する公安委員会に届け出なければならないものとしているが(第二条)、このような多衆行進又は集団運動は、その性質上、往々にして不測の事態を引き起しやすく、ややもすれば自由の濫用に陥り、延いては公共の福祉を侵害する虞があるところから、あらかじめ公安委員会に届け出なければならないものとしたに過ぎないものであり、なお、一、学生、生徒、児童その他の遠足、修学旅行体育、競技、二、婚礼の行列、葬式、みこし渡御だしの引き廻しその他古典による神社仏閣の行事等通常の冠婚葬祭で示威にわたらないもの、三、官公庁又は消防団の主催する行事及び四、平穏時の昼間における行事で参加人員概ね百名以内のものについては公安委員会に届け出る必要がなく(右条例第二条但書、昭和二十四年、千葉県公安委員会告示第四号、多衆行進及び集団運動に関する条例取扱手続第一)、又公安委員会は、届け出られた多衆行進又は集団運動が行進又は集団する場所の附近の他人に不安を与え又はその自由を妨害する虞があると認めるときは、一、交通秩序維持に関する事項、二、危険防止のためじゆう器、きよう器、その他の危険物携帯の制限に関する事項、三、夜間の静ひつ保持に関する事項、四、多衆行進又は集団運動の隊伍の保持に関する事項、五、官公庁の事務妨害防止に関する事項及び六、公共の秩序を保持するため真にやむを得ない場合における日時、場所の変更又は人員の制限に関する事項のみに限つて条件をつけることができる(右条例第七条第一項、右取扱手続第四第一項)ものとされているに過ぎないのであるから、右条例による制限は、むしろ公共の福祉のために必要且つやむを得ない最少限度の制限ということができこそすれ、決して憲法が保障する集団行進又は団体運動等の自由に対する不当の制限であるとは認められず従つて、右条例が憲法の条規に違反した違法のものであるとすることは当らない。そして、地方自治法第十四条第一項及び第五項によれば、県のような普通地方公共団体は、地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること、公園、運動場、広場、緑地、道路、橋梁、河川、運河、溜池、用排水路、堤防等を設置し若しくは管理し、又はこれらを使用する権利を規制すること等同法第二条第三項が例示した公共団体の区域内における行政事務で国の事務に属さない事務に関して条例を制定し、これに罰則を制定することができるものとされているが、このことは憲法の容認するところであり(日本国憲法第九十四条)、なお右に例示された事務が普通地方公共団体の行政事務に属することは論を俟たないところであるから、右条項に基いて制定されたと認められる本件条例は、その形式においても何ら憲法に違反するものではなく、なお、その実質が憲法に違反するものでないことはすでに説示したとおりであるから、論旨は理由がない。

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